企業における「IR業務」の役割とその展望

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皆さんは会社の存続においてもっとも大切なことは何だと思いますか?社長のリーダシップ、社員のモチベーション、安定的な利益の確保、リスクマネジメントなどなど、様々な要素が考えられると思います。もちろんどの要素も健全な会社経営においては欠かせないものですが、近年注目されているのは「IR」という業務の必要性です。あまり聞きなれない言葉ですが、決して最近登場した新しい業務ではありません。それどころかIRは長い間、大手の企業を中心に、会社にとって重要な役割を担ってきました。
では、そのIR業務とは一体何なのでしょうか。他の業務との違いも交えながら説明していきたいと思います。

◆IR業務ってなに?
IRとは「インベスター・リレーションズ」の略称です。インベスターという言葉にはいくつかの意味がありますが、IRにおいては”投資家”という意味で使用されます。そして、リレーションズは”関係”という意味です。そうです。つまり、IR業務とは投資家や株主と深く関係する仕事、ということになります。それでは、IRと投資家・株主は具体的にどのような関係性を持っているのでしょうか。
IRのもっとも重要な役割は、「投資家や株主に対して自社の経営状況や財務状況などの情報を提供すること」とされています。投資家や株主はいわば、企業の資金を援助してくれる存在でもあり、会社を支えてくれる大切な人たちです。彼らに自社の情報を積極的に開示することは企業の義務でもあり、彼らからの信頼を得て健全な関係を築くためには欠かせない活動なのです。その先頭的な役割を担っているのがIRである、ということになります。
では次に、どのようにして情報を提供していくのか、具体的な方法をいくつか見ていきましょう。

◆IR業務の活動方法
IRの具体的な活動方法としては、大別して2つあります。①説明会型で直接投資家や株主に情報を伝える、②資料や冊子、インターネットなどから伝える、という方法です。
①に関しては、実際に顔を合わせる場があるので、こちらからの一方的な説明に終始しない形を取ることができます。投資家・株主が抱く疑問点や意見に対して直接応えることができることがメリットです。②は決算報告や事業の詳細などの情報を資料や目に見える数字として細かく伝えることができます。また、このように様々な方法で情報を透明化する活動は、潜在的な投資家・株主の確保への宣伝効果としての役割も果たします。

◆広報業務との違い
ここまでの説明を聞くと、「結局、IRは外に向けて宣伝する業務なのだから企業の広報と同じ仕事?」と考えた方もいると思います。確かに、活動内容や方法としては重なるところも多いのですが、両者では「提供する情報の内容」に少し違いがあります。
広報が出す情報は、主に製品のPRやCSR(社会貢献活動)、利益の増収といったプラスの情報が多いのに対して、IRにはマイナス要素も含めてすべてを開示する役割があります。たとえば、企業が販売する製品に大きな過失があり、前年比に対して会社の利益が大幅に減ったとします。この時、広報では積極的にその情報を流す責任はおおむねありませんが、IRとしては積極的に“流さなければならない”、という違いです。
ただし、あくまでもこれらは一般論であり、企業の性質によって広報とIRのポジショニングは異なるということを付け加えておきます。

◆IR業務の展望
これらの役割から企業にとってのIR業務の重要性がお分かりいただけたかと思います。特に現在は、インターネットの発達や主に航空機の発達による交通網の整備によって海外の投資家・株主からも日本企業への注目が集まっています。また、投資家・株主の種類も変化している(個人投資家が増加している)という現状もあるようです。こうした時代の変化があるという諸背景からも、IRの役割と責任は将来的にますます高まっていくことでしょう。

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